緊張と仲良くなろう!「ソロ嫌い」から脱出する緊張との付き合い方

演奏に活かす Sep 08, 2021

大きなステージにひとりで立ち、演奏をはじめる瞬間。
吹奏楽やオーケストラなどで、自分一人だけが目立つソロがあるとき。

想像するだけで緊張してしまうような場面を、私たちは音楽を続ける限り何度も経験します。
みなさんのなかには、「緊張して上手に吹けないからソロが苦手、嫌い」という人も少なからずいらっしゃることでしょう。

しかし、緊張とうまく付き合うことで、自分の実力を発揮し、素敵なソロが演奏できるようになるとしたら、チャレンジしてみたくありませんか?

アレクサンダーテクニークの重要な考え方のひとつに「気づくこと」があります。
あなたの過度な緊張の原因や、その中で心身に起きていることに気づくことが、緊張と仲良くなる第一歩です。

 

過度な緊張の原因は?

演奏する際の過度な緊張の原因は、「非日常的な空間」と「他人からの評価」にあります。

練習している部屋の何倍も広いホール、信じられないくらいまぶしい照明、いつもはいないたくさんの聴衆、いつもと違う椅子や譜面台。
いつもと違う景色や感覚は、あなたのことを不安にさせます。
楽屋でいつもの仲間と話している時は全く緊張していなかったのに、いざステージに立つと、嫌な緊張が高まって頭が真っ白になってしまった、という経験は、どんな方にもあるものですよね。

そんな時、ふと客席に目をやると、師匠やライバル、先輩の顔が目に入ります。
もしコンクールやコンペティションなら、審査員の方がいるかもしれませんね。

「先生がいる…レッスンで言われたことが出来なかったらどうしよう。」
「あの人に下手って思われたくない、上手に演奏しないと」
「私のソロが失敗に終わったら、みんなで次の大会に行けない…」

プレッシャーを感じ、心も体もどんどん思い通りにならなくなってしまいます。

「いつもと違う環境での演奏を他人に評価される」という事実が不安で、恐ろしくて、心や体を極度の緊張状態に導いてしまうのです。

不安を覚えて緊張するという反応は、人間にとって当たり前のことで、決して悪いことではありません。
しかし極度の緊張状態が長く続くことはストレスになりますし、なにより演奏に支障が出ます。
身体の過度な緊張は、身体の動きを制限し、あなたの表現や演奏の邪魔をしてしまうのです。

 

「超緊張中」の身体にはなにが起きている?

では過度な緊張をしているとき、あなたの身体には何が起きているのでしょうか?
ここでは実際に、皆さん自身が緊張した場面を思い出しながら一緒に考えてみましょう。

あなたが音楽活動の中で、一番緊張したのはどんなときですか?

例えば私の場合、中学生のときに出演した発表会のことを思い出します。
私の専門はトロンボーンで、その発表会は私の師匠にあたる先生が主催してくださった演奏会でした。

私にとって初めての、たったひとりで挑む本番。
簡単なエチュードを一曲演奏するだけだったのですが、音出しのときからひどく緊張していて、うまく息を吸うことができませんでした。

「どうしよう、どうしよう」と思いながら舞台に上がり、「落ち着け」と言い聞かせながらも、沈黙に耐えられずすぐに演奏を始めてしまいました。
最初の音が出なかった瞬間から冷汗が止まらなくなり、楽器を握る力がどんどん強くなっていきます。

私が音を外しても、目の前が真っ白になって楽譜が見えなくなっても、誰も助けてくれません。
客席にいる生徒さんや先生が、心の中で私のことをあざ笑っているように感じて、ただただこの場が早く終わることだけを祈っていました。
出来はもちろん散々で、ショックでその日から数日練習ができなくなってしまいました。
今でも思い出すだけでドキドキしてしまいます。

みなさんも目を閉じて、今までの経験の中で一番緊張した瞬間を思い出してみてください。
鮮明に思い出そうとすればするほど、首や肩が固まってきたり、身体が縮こまるような感覚を覚えたりしませんか?

 

緊張している時、あなたの身体にはぐっと力が入っています。
人間も動物なので、恐怖や不安を感じると反射的に体を固めたり、小さく縮んで自分の身体を守ろうとしたりします

さらに、ステージの上だと、そんな自分に対して「人に見られているからきちんとした姿勢で立たなきゃ」と無理やり背筋を伸ばしてみることもあるでしょう。
いつもどおりの自分でないことに焦ってしまい、何度も練習した曲の楽譜を凝視したり、緊張して客席が観られないからいつもはみない楽器をみつめながら演奏したりと、視野もどんどん狭くなります。
しかしこれでは、体にどんどん力が入るばかりで、普段どおりの演奏からより遠ざかってしまいますよね。

力が入って固まった体は動かしづらく、結果的に演奏の邪魔をしてしまうことになるのです。

 

コツは視野を広くすること!2ステップで緊張に歩み寄ってみよう!

嫌な緊張から少しでも解放されるために必要なことは「視野を広げること」そして「周囲や自分に起きていることに気づくこと」です。

繰り返しになりますが、緊張の原因は「不安や恐怖」にあり、演奏の場では「非日常的な空間と他人からの評価」が、過度な緊張をつれてくる要因になっています。
裏を返せば、この不安を解消することで、演奏に支障が出るほどの過度な緊張はかなり軽減されるのです。

ではひとつひとつ、不安を解消する準備をしてみましょう。



 

過度な緊張をやめる準備① 自分がいる場所のことを知る。

まずひとつめの「非日常的な空間」からくる不安を解消するには、その空間の情報を集めることが近道です。
非日常的な空間で緊張してしまうのは、知らないことが多くて不安だから。
今自分が立っている「いつもと違う場所」を「知っている場所」にすることで、不安を軽減する作戦です。

例えば、あなたがソリストとして舞台に立っていることを想像してみてください。
あなたはいつもどおり緊張していて、身体が固まり、息も浅くなっています。
ここで、身体が固まって狭くなった視野を広げて、できるだけ多くの情報を集めてみましょう。
今、見える事実だけを集めていくと、自然と視野は広がっていきます。

・真ん中の席が空いている
・審査員の席がある。
・扉は4つ
・私の目の前の人は眼鏡をかけている

だんだん見える範囲が広がってきて、たくさんのことに気づけるようになります。
視野が広がると、自然に首や体の緊張が解け、さっきよりもかなり自由に動けるようになります。

「めちゃくちゃ緊張する非日常的な空間」が、「真ん中の席が空いていて扉が4つある、知っている舞台」になりました。
知っている事実が多ければ多いほど安心できる場所になり、不安な気持ちや緊張は和らぎます。
これが出来たら、次は自分を観察してみましょう。

 

過度な緊張をやめる準備② 「どうしよう」のかわりに「こうしよう!」

音楽をしていると、他人から評価される場面がたくさんあるので、「下手だと思われたらどうしよう」と考えてしまうのはある意味必然とも言えます。
もし、これまで誰かに厳しい言葉で傷つけられた経験のある方なら、また傷つくんじゃないかと余計に不安になりますよね。

でもそれ、まだ言われてません。

もし、何か言われることがあっても、それはあなたの演奏が終わった後のこと。
今からのあなたの演奏が優れているかそうでないかは、まだ誰にもわからないのです。

未来のことはいったん置いておいて、今の自分がどうなっているのか、ありのままを確認してみてください。

「手が震えているな」
「楽器が重たいな」

ステップ①と同じように、事実をひとつひとつ確認していきます。

自分の身に何が起きているか確認が出来たら、次は今の自分がどんな風に演奏するか、目的を明確にします。

「楽しく演奏する」
など、抽象的なものでもいいですし、
「昨日練習したところは、今日はこんな風に吹いてみよう」
と、ちょっとチャレンジをしてみてもいいかもしれません。
ここで決めたアイデアを実行しながら、演奏をしてみましょう。

師匠でも、審査員でもない、あなた自身が決めたアイデアを実行しながら演奏することで、他人の評価を不安に思う時間を減らすことができます。

 

現代を生きる私たちは、今のことよりも過去や未来のこと、過程よりも結果のことを考えてしまう傾向にあります。
アレクサンダーはそんな私たち人間のことを「エンドゲイナー(結果指向の人々)」と表現しました。
私たちはこの先に何が起こるか、あの時に何が起こったかばかりを考えていて、今自分の身に何が起きているかを考えることを忘れてしまいがちです。

これは緊張している時も同じ。
「うまく吹けなかったらどうしよう」「下手と思われたらどうしよう」
と、まだ始まっていない演奏に対して心配し、まだ言われていない評価を想像して勝手に不安に思ってしまいます。
しかし、実際に演奏をするのは今のあなたです。
未来のことは未来のあなたにお任せして、今のあなたのことを見つめてみてくださいね。

 

ソロやステージはこわくない!

ステージで演奏したり、ソロを披露したりすることは、大好きな音楽で自分を表現する手段であり、本来こわいものではありません。
それでも私たちは、ステージに上がるたびに不安に思い、緊張してしまいますよね。

今起きていることを知ること、気づくことで、過度な緊張の原因となる要素はどんどん減っていきます。

身体が自由に動ける状態であれば、適度な緊張はあなたの味方です。

今回紹介した2ステップで、緊張と仲良くなる第一歩を踏み出しましょう!

 

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